レーシックで使用するレーザーについて

レーシックでは、フェムトセカンドレーザーとエキシマレーザーの2 つのレーザーを使用します。
日本でレーシックが普及し始めてから20 年以上が経ちますが、その間で手術で使用するレーザーも大きく進歩しています。レーザー機器の進歩は、手術の安全性や正確性に直結しますので、最終的に手術を受ける患者にとっての安心感につながります。ただし、稼働しているレーザーのすべてが新しいという訳ではなく、20 年前に発売されたレーザーも稼働していますので、その性能の差は一目瞭然です。このため、レーシックを受ける時には、レーザーの基本性能位は知っておきたいところです。
最近では、レーシックの安全性を重視した角膜強化型レーシックや、老眼治療にも対応した遠近両用レーシックも登場していますので、幅広い選択肢の中から自分に合ったレーシックをお選びください。

フェムトセカンドレーザーについて

フェムトセカンドレーザーは、フラップを作成するレーザーです。フェムトセカンドレーザーは、設定した深さのみに作用する特性があるので、周辺組織にダメージを与えることなく、分子レベルで切開することができます。昔は、マイクロケラトームという眼科用のカンナでフラップを作成していましたが、力加減や機械の操作技術に左右される面が多く、フラップ作成の工程で合併症が起こることがありました。この課題を克服したのがフェムトセカンドレーザーです。フラップは、約100 ㎛の厚さで作成しますが、コンピューター制御されたレーザーで作成することで、均一な厚みの滑らかなフラップ作成が可能となり、フラップ作成時の合併症を減少させることができました。また、フェムト秒(1000 兆分の1 秒)といった超高速でレーザーを発振することができるため、手術時間も大幅に短縮できるようになったことで、手術の負担軽減につながっています。

【目に優しいレーシック】

レーシックで使用されるフェムトセカンドレーザーには種類があり、開発メーカーや発売時期によって特性に違いがあります。最近では、「目に優しいレーシック」というコンセプトのもとでジーマー社(スイス)が開発した「フェムトLDV シリーズ」が注目されています。これは、フラップ作成時の安全性が重視される傾向が強まり、角膜へのダメージを抑えることによって合併症の抑制効果が確認できたからです。また、フェムトセカンドレーザーは、白内障手術にも使用されるようになり、手術の正確性が求められる多焦点眼内レンズによる白内障手術で、レーザーの持つ正確性が注目されています。日本国内では、複数のフェムトセカンドレーザーが稼働していますが、ここでは、目に優しい手術で知られているフェムトLDVシリーズ最新機種となる「フェムトLDV-Z8」を中心にフェムトセカンドレーザーが持つ新しい性能について触れたいと思います。

目に優しいレーシックで使用されるフェムトLDV-Z8 の性能は、レーシック手術の安全性、正確性、効率性を重視しています。

【フラップ作成の安全性について】

安全にフラップを作成するには、照射エネルギー、照射スピード、照射スポットの3 つの要素が特に重要です。照射エネルギーが強ければ組織へのダメージが大きくなりますし、照射スピードが遅ければ手術の負担が増加します。
また、照射スポットが大きければ正確性が低下するだけではなく、不正乱視の発生率が高くなりますので、フラップ作成には、この3 つの要素が欠かせません。フェムトLDV シリーズは、この3 つの要素を重視して開発されたレーザーで、そのシリーズ最新作となるのが「フェムトLDV-Z8」です。レーシックが普及してきた当時はイントラレース(イントラレース社:アメリカ)というフェムトセカンドレーザーが活躍していたため「イントラレーシック」とも呼ばれていましたが、目に優しいレーシックが主流となる中で、今ではフェムトLDV による「Z レーシック」へ移り変わっています。このZ レーシックに採用されている照射技術をスモールバブルテクノロジーと言いますが、細かな泡のような優しいレーザー照射が特徴です。

【フェムトLDV-Z8 がお勧め】

フラップ作成の工程で使用するフェムトセカンドレーザーでは、フェムトLDV-Z8 の性能が高く評価できると思います。フェムトLDV シリーズは、日本国内でも複数の施設で使用されていますが、シリーズ最新作となるフェムトLDV-Z8 が正確性、安全性、安定性の面から見てもお勧めです。
なお、アイレーシックやアイデザインというレーシック手術もありますが、ブランドイメージが先行しているため、いかにも新しいレーシックのように見えますが、実際に手術で使用するレーザー機器は以前に発売された機種になります。こういった発売時期の違いによってもレーザーの性能に違いがありますので、情報として知っておいて損は無いと思います。

エキシマレーザーについて

エキシマレーザーは、角膜のカーブを矯正する工程で使用しますが、その性能は飛躍的に進化しています。レーシックが日本で普及してきてから約20 年以上が経過しますが、その性能は当時のレーザーとは比較にならないほど進化を遂げています。レーシックと言えども目の手術になりますので、多少の不安はつきものですが、「8 次元アマリス1050RS」には不安を払拭するのに十分な新機能が搭載されています。多くの新機能が搭載されているので細かな性能の説明は、手術を提供されるクリニックにお任せするとして、注目すべき4 つの性能についてご紹介したいと思います。

8次元アマリス1050RS
(シュウィンド社:ドイツ)

【アイトラッキングシステム】

正確なレーザー照射を行う上で必要不可欠な機能としてアイトラッキングシステムがあげられます。人間の目は上下左右と自在に動きますが、手術中も例外ではありません。立っている時と寝ている時でも目の傾きが違いますし、手術中の緊張によって目が上転すると言われています。手術中に執刀医から「ここを見ていてください」と指示されても全く目を動かさずにいることは不可能です。ここで欠かせない機能がアイトラッキングシステムになります。この機能は、目の動きを追いかけてレーザーを照射できる機能で、正確なレーザー照射を手助けしています。レーシックが普及してきた当時は、縦と横の平面的な動きしか追いかけられませんでしたが、8次元アマリス1050RS は「傾き・回転・旋回・上下動」といった立体的な動きに対応できるエキシマレーザーとして世界的に普及しています。
この8次元アマリス1050RS は、シュウィンド社(ドイツ)が開発したもので、日本国内でも限られた施設に導入されていますので、レーシックを検討中の方はエキシマレーザーの機種にも注目してみてください。
ただし、アマリス1050RS には、「7 次元アイトラッカー」と「8 次元アイトラッカー」の2 つのタイプがあります。もちろん、8 次元アイトラッカーを搭載したアマリス1050RS がシリーズ最新作となりますので、間違えないようにご注意ください。アイトラッキングシステムは、レーシック手術の安全性を大きく進歩させたといっても過言ではない機能になりますが、アイトラッカーで追いかけられない程の大きな動きがあった場合は、レーザーが自動的に止まりますので安心してください。

■2 次元アイトラッカー
レーシックが普及してきた当初は、縦と横の平面的な動きに対応した2 次元アイトラッカーが主流でした。しかし、眼球の動きは立体的なので、平面的な追尾しかできない2 次元アイトラッカーではすべての目の動きを追いかけることは不可能でした。それでも、当時としては画期的な機能であったことに違いありません。
■8 次元アイトラッカー
8次元アマリス1050RS のアイトラッキングシステムは、縦、横、斜め、旋回、回転、上下動、微細な角度、瞳孔中心の動きといった8 つの動きに対応しています。これだけ優秀なアイトラッカーを開発したシュウィンド社の技術には脱帽ですが、レーシックを受ける患者の立場からは、安心に直結する機能だと思います。
ちなみに、アマリス1050RS は、その名の通り1 秒間に1050 発のレーザーを発射することができます。この超高速照射の1 発1 発を搭載されたアイトラッカーが追尾していますので、改めてとんでもない技術だと感心します。
■アマリスのアイトラッキングシステム追尾記録
上の図は、実際に8次元アマリス1050RS のアイトラッキングシステムが手術中の目の動きを追いかけた追尾記録になります。目を動かさないように注意していても無意識な動きまではどうにもできませんが、きちんと追いかけてレーザーを照射できる技術があれば安心して手術に臨めます。

【エキシマレーザーの照射方式】

現在、日本国内でも複数のエキシマレーザーが稼働していることは説明しましたが、レーザーの照射方法にも違いがあります。この照射方法についての情報は、目にすることが少ないと思われますが、エキシマレーザーにはブロードビームという照射方法とフライングスポットという照射方法があります。ブロードビームは旧式の照射方法になるので、フライングスポット照射と比べて精度が落ちます。簡単に説明すると、ブロードビーム照射は1 本の太いレーザーの下を大小の丸い穴が開いたプレートが回転し、その穴を抜けたレーザーが実際に照射されます。最初は大きい穴を通ったレーザーで角膜を大まかに削って、次に小さい穴を通ったレーザーで微調整を行うイメージになります。それに比べてフライングスポット照射は、照射するポイントに直接レーザーを照射する方法で、ブロードビーム照射よりも照射スピードも早く、正確で精密な照射が可能です。もちろん、アマリス1050RS はフライングスポット照射になりますが、アイレーシックやアイデザインといったレーシックで使用するエキシマレーザーは、ブロードビーム照射になりますので、旧式の照射方法になります。

【アベレーションフリー照射プログラム】

アベレーションフリーは、レーシック手術の課題であった不正乱視の増加を抑える照射プログラムです。レーシックは、エキシマレーザーで角膜を削って視力を改善しますが、角膜を削ることで不正乱視が増加することがレーシックの課題でもありました。従来機にも同様の機能がありましたが、アベレーションフリーはより強力に不正乱視の増加を抑えることができます。また、レーシック手術が受けられるのは18 歳以上となりますが、最低でも18 年間も見続けてきた自分の見え方があり、数十年と慣れ親しんだ自然な見え方は誰にでもあるものです。近眼で自分は目が悪いと思っていても、長い間見てきた自然な見え方には変わりありません。レーシックを受けると今までの見え方が大きく変化することになりますが、アベレーションフリーは、本来持っている自然な見え方の質を保ちながら、視力を向上させる新しいプログラムになるため、質の高い自然な見え方が期待できます。

【スマートパルステクノロジー】

スマートパルステクノロジーは、アマリス1050RS に搭載された新しい技術です。簡単に言うと、角膜の表面を滑らかに整える照射プログラムで、角膜を削ることによる不正乱視の増加を抑える機能になります。眼内レンズを使って視力を回復させるICL とは違って、レーザーを使用するレーシックはレーザーの機能ばかりがクローズアップされてきましたが、見え方の質に対する新しい機能も登場していますので、手術の精度はかなり高くなっていると思います。

【レーザーは発売年度に注目しましょう】

エキシマレーザーは、視力を回復させる屈折矯正の工程に使用するレーザーになりますが、レーシックが日本に普及してから25年以上が経過していますので、レーザーの性能は飛躍的に進化しています。単純に考えても、古くて性能の低いレーザーに自分の目を任せるなんて怖くて仕方ありません。ただ、日本では20年以上も前に発売されたレーザーが今も稼働しています。それも、メーカーや導入しているクリニックでは、あたかも新しく性能の高いレーザーのように紹介されていますので、「患者が正確な情報を知らなかったら・・・」と思うと心配になってきます。ここでは、国内で稼働している主なエキシマレーザーの発売時期を紹介しますので、参考にしてください。

機種名 メーカー 発売時期 アイトラッキングシステム
EC5000 NIDEK 社製 1994年 2次元
Visix Star4 J&J 社製(AMO) 1995年 2次元
Allegretto Wave Eye-Q ALCON 社製 2004年 2次元
MEL80 Carl Zeiss 社製 2008年 2次元
EX500 ALCON 2010年 2次元
Amaris1050RS SHCWIND 社製 2014年 8次元

【お勧めは、8 次元アマリス1050RS】

エキシマレーザーは、実際に屈折矯正の工程に使用するレーザーなので、レーシックを検討する上でその性能は重要だと思います。まず、照射方法はフライングスポット照射を迷わず選択します。次に、アイトラッカーについては、どんな動きにも対応してくれる8 次元アイトラッカーが頼もしく感じますので、2 次元や3 次元は却下。また、アベレーションフリーやスマートパルステクノロジーは、見え方の質を重視した機能なので外せない要素になるため、レーシックを検討するなら8 次元アマリス1050RSがお勧めです。

8次元アマリス1050RS
シュウィンド社製(ドイツ)

角膜強化型レーシックについて

角膜の強度は、50% 維持できていれば問題ないとされていますが、レーシック手術を受けると角膜強度は低下します。角膜の強度的には全く問題ありませんが、もともと持っている角膜の厚みも個々に違いますし、角膜を削る量は人によって違います。特に、近視や乱視が強い人は、角膜を削る量が多くなるので心配になるかもしれませんが、そんな心配を払拭してくれるのが「角膜強化型レーシック」です。

【角膜強化型レーシックの考案者は日本人眼科医だった】

角膜強化型レーシックは、レーシックとクロスリンキングを組み合わせることで、手術で低下した角膜強度を元に戻すことができる新しい技術になります。クロスリンキング治療は、もともと円錐角膜の治療に使われていましたが、角膜を構成するコラーゲン線維の結びつきを強化して角膜強度を向上させる効果があります。この効果を活かして、レーシック手術と併用することで「角膜強化型レーシック」が誕生しました。すでに、海外の眼科学会でもその成果が高く評価され、今ではスタンダードなレーシックとして世界各国に普及しています。この角膜強化型レーシックは、日本の眼科医である冨田実医師によって考案されたもので、実際に日本国内でも行われています。角膜強化法の費用はクリニックによって異なりますが、両眼で35 万円という高額な料金を設定している所もあるようです。この術式を考案した冨田実先生のクリニックでは、両眼で8 万円というリーズナブルな価格設定になっていますので、かなり良心的だと思います。

【アマリス1050RS は角膜強化型レーシックに対応】

角膜強化型レーシックでは、クロスリンキングという角膜強度を強化させる治療を併用します。クロスリンキングは、角膜にビタミンB2 を点眼しながら紫外線を照射することで、角膜を構成するコラーゲン線維の結びつきを強化する治療になります。このクロスリンキングに使用する機械には、いくつか種類がありますが、8 次元アマリス1050RS にはクロスリンキングの機能が搭載されています。手術中に移動することなく、角膜強化法が受けられるので、患者にとってはかなり便利です。レーシック手術の最中にベッドを移動するなんてことを考えただけでも怖くなります。目の手術中に場所を移動できるものかと心配でしたが、これで一安心です。

8 次元アマリス1050RS に搭載された
クロスリンキングシステム
「CXL-365 VARIO SYSTEM」

【角膜強化型レーシックの効果と適応】

角膜強化法には、角膜強度を向上させることで手術の合併症を予防する効果があります。角膜強度が弱くなると、眼圧(目の内圧)によって角膜が押されて近視が戻ってしまうことがあります。また、角膜の弱くなった部分が突出してくると角膜拡張症という合併症が起こる可能性があります。
角膜強化法は、副作用の少ない安全性の高い治療になりますので、受けることに損はないと思います。特に、強度近視の人や乱視が強い人は、角膜を削る量が多くなるので、角膜強化法を併用することが有効です。

■角膜強化型レーシックの効果
  • ・角膜強度を元に戻すことができる
  • ・近視の戻りを予防できる
  • ・角膜拡張症などの合併症を予防できる
  • ・レーシック手術の適応範囲が広がる
  • ・強度近視や乱視の強い人でも安心してレーシックが受けられる
■角膜強化型レーシックが適している方
  • ・角膜が厚さが薄い方
  • ・アトピー性疾患をお持ちの方
  • ・強度近視の方
  • ・レーシック後の視力低下を予防したい方
  • ・乱視の強い方
  • ・角膜形状に問題がある方

【角膜強化の必要性は医師に相談】

角膜強化型レーシックは、角膜強度を落とさずにレーシックで視力回復ができますが、その必要性は人によって違いがありますので、治療を受ける前には必ず医師に相談してください。また、角膜強化型レーシックに独自の名称をつけてプレミアムなプランとして扱っているクリニックもあるようです。クリニックによって費用も異なりますが、手術費用が数十万以上も高くなるケースもあるようなので、そういった点には注意が必要です。

遠近両用レーシックについて

8 次元アマリス1050RS には、老眼の治療にも対応したプレスビーマックス・ハイブリッドという遠近両用レーシックプログラムが搭載されています。レーシックは、もともと近視、遠視、乱視を治療する手術だったため、老眼を自覚するようになる40 歳以降の人は手術が適応とならないことが多く、手術の適応年齢に限りがありました。プレスビーマックス・ハイブリッドは、下の図のように角膜の中央から周辺に向かって近方、中間、遠方と見る距離に合せて角膜のカーブを矯正できるため、40 歳以降の人でもレーシックで視力を回復できるようになりました。

プレスビーマックス・ハイブリッドによる
レーザー照射のデザイン

【近視の利点について】

老眼は、一般的に40 歳を過ぎた頃から自覚すると言われています。老眼が始まると、手元や細かな文字が見えづらくなりますが、近視の人は老眼を自覚する時期が遅くなる傾向があります。これは、近視の人の目は、遠くが見えづらく、近くが見えやすい目をしているからで、「近視の利点」とも言われています。ただし、近視の利点によって老眼の症状を自覚するのが遅れているだけで、実際には老眼が始まっているのです。レーシックで近視を治してしまうと、今まで自覚していなかった老眼を自覚してしまうため、せっかく手術を受けても老眼によって手元が見えづらくなってしまいます。レーシックを受けて老眼になったという話を聞いたことがありますが、実はレーシック手術で老眼になったわけではなく、近視を治したことで「近視の利点」が無くなってしまったことが原因です。遠近両用レーシックは、近視、乱視、老眼を治療することができますので、40 歳以降の人に適した視力回復手術になります。