レーシックと ICL どっちを選ぶ?
さて、視力回復手術を受けようと考えた時、レーシックとフェイキイク ICL のどっちを受けた方がいいのか迷ってしまう人もいると思います。大切な目の手術だからこそ、芸能人が受けているからと何となく流行に合わせてしまうことがないように、どちらの情報もしっかり入手して、自分の目の状態に合った手術を選択してください。
視力回復手術について
視力回復手術を受ける時に、レーシックと ICL で迷ってしまう人は多いと思います。近年、SNS が発達したことで、以前よりも気軽に個人の体験を発信することができるようになり、芸能人やモデルさんたちが ICL を受けたことを自身の SNS を通じて公表しています。こういったことが ICL への注目度に影響していると思われますが、日本を代表するサッカー選手やプロ野球選手、テニスプレイヤーなどの一流アスリートの中にはレーシックを受けた選手が大勢います。世界的なプロゴルファーであるタイガーウッズ選手はレーシックを受けて今もなお活躍しています。日本国内でも 100万人~ 120 万人がレーシックを受けていると言われていますが、欧米やロシア、中国、韓国でもレーシックが普及していますので、世界でも数千万人が手術を受けられています。実際にアメリカでは年間で 120 万人もレーシックを受けているという報告もありますので、どちらも視力を回復することができる有効な手段に違いはありません。
手術方法も違いますし、それぞれにメリットとデメリットがありますが、流行によっても人気が左右されることもあるので、最終的には自分に合った手術を選択することが重要になります。ここでは、視力回復手術を受けたいと考えた時に、レーシックと ICL のどちらを受けた方がいいのかという疑問について検討していくことにしましょう。
視力回復手術の手術工程について
レーシック手術は、レーザーを照射して角膜のカーブを変化させることで、近視、遠視、乱視を治療することができます。最近では、遠近両用レーシックが登場したことで、老眼も治療できるようになりました。一方で ICL は、目の中にレンズを挿入することで視力を回復する手術になりますが、ICLにも老眼に対応したレンズが登場していますので、どちらの手術も幅広い年代に対応できる視力回復手術であると言えます。レーシックのように角膜を削ることに抵抗がある人もいれば、ICL のように目の中にレンズを挿入することに抵抗がある人もいると思いますので、それぞれの手術工程を簡単に紹介します。
<レーシックの手術工程>
レーシックには、フラップ作成と屈折矯正の 2 種の手術工程があり、それぞれの工程で使用するレーザーが異なります。フラップ作成ではフェムトセカンドレーザーを使用し、屈折矯正ではエキシマレーザーを使用します。最近では、レーシックの課題を克服した角膜強化型レーシックが主流となっていますが、レーシック手術と同時に行うことができますので、その角膜強化法も含めた手術の工程は以下のような流れになります。
①点眼麻酔
- 麻酔薬を点眼します。
- まぶたを開いて眼球を固定する開瞼器をつけます。
②フラップ作成
- フェムトセカンドレーザーを照射して、フラップを作成します。
③屈折矯正
- フラップを開いてエキシマレーザーを照射して、x屈折異常を矯正します。
角膜強化型レーシックの場合(クロスリンキング治療を行います)
◆リボフラビンの点眼
- フラップを戻す前にリボフラビン(ビタミン B2)を点眼します。
◆紫外線
- フラップを戻してから、安全な波長の紫外線を照射して角膜強化法を行います。
(角膜強化法は片眼 1 分程度で終了します)
④手術終了
- フラップを元の位置に戻して角膜を整えて手術は終了です。
⑤手術後の安静と診察
- 手術終了後は回復室で、目の状態が安定するまで20 分程度お休みいただきます。
- その後の診察でフラップの状態を確認して、問題がなければご帰宅いただけます。
<ICL の手術工程>
ICL は、眼内レンズの挿入口を作る角膜切開と眼内レンズの挿入および固定という 2 つの手術工程があります。レーシックは角膜表面の手術になりますが、ICL は眼内の手術になりますので、そういった意味で手術のリスクは ICL のほうが高くなります。ただし、角膜を削らないというメリットがあり、強度近視の方でも手術を受けることができます。
①点眼麻酔
- 麻酔薬を点眼します。
- まぶたを開いて眼球を固定する開瞼器をつけます。
②角膜切開
- 角膜を 2mm ほど切開してレンズの挿入口を作成します。
③レンズの挿入
- 切開創から虹彩と水晶体の間(後房)にレンズを挿入します。
④手術終了
- レンズの位置を整えて手術は終了です。
⑤手術後の安静と診察
- 手術終了後は回復室で、目の状態が安定するまで安静にしていただきます。
- その後、眼圧を測定して診察を行います。
目の状態に問題がなければご帰宅となります。
視力回復手術に適している人、適していない人
視力回復手術は、メガネやコンタクトレンズに変わる視力矯正の有効な手段になりますが、手術手技も異なりますので、手術の適応基準にも違いがあります。また、角膜を削るレーシック手術と角膜を削らない ICL を比較して、ICL のほうが優れているというイメージを強くアピールされているクリニックが多く見受けられますが、レーシックも素晴らしい視力回復手術のひとつです。角膜を削ることに抵抗がある人もいれば、目の中にレンズを挿入することに抵抗がある人もいます。どちらの考え方も間違えではありませんので、自分の目の状態、見え方の希望、ご予算など様々な検討を行った上で、自分にに適した手術を選択することが重要です。軽度近視から中等度近視であれば、レーシックでも十分に視力を改善することができますし、新しく開発されたレーザーを使用すれば、ICL と比較しても遜色のない質の高い視力を得ることも可能です。
<レーシックが適している人>
- 軽度近視から中等度近視の人(目安としては -6.0D 以下)
- 角膜の厚さが十分にある人
- 手術の費用を抑えたい人
- 目の中のスペースが狭い人
- メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放されたい人
- ドライアイや花粉症で辛い思いをされている人
- 手術を希望している時期から半年以内に妊娠の予定がない人
- 他に目の病気がない人
- スポーツをされている人(格闘技や激しいスポーツは要相談)
<レーシックが適していない人>
- 強度近視、強度乱視の人
- 角膜の厚さが足りない人
- 角膜形状に問題がある人
- 角膜を削る手術に抵抗がある人
- 斜視や弱視の人
- アトピー性疾患をお持ちの人
- 手術を受けることに抵抗がある人
- 精神安定剤などを服用している人
- 妊娠中、授乳中の人
- 何らかの眼疾患をお持ちの人
- 膠原病などの全身疾患をお持ちの人
- 神経質な人
- 職業上の問題で視力回復手術を禁止されている人
<ICL が適している人>
- 軽度近視から強度近視の人
- 角膜の厚さが足りない人
- 角膜形状に問題がある人
- 目の中のスペースがしっかり確保できる人
- メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放されたい人
- ドライアイや花粉症で辛い思いをされている人
- 手術を希望している時期から半年以内に妊娠の予定がない人
- 他に目の病気がない人
- スポーツをされている人(格闘技や激しいスポーツは要相談)
<ICL が適していない人>
- 眼内にレンズを挿入することに抵抗がある人
- 目の中のスペースが狭い人
- 手術を受けることに抵抗がある人
- 精神安定剤などを服用している人
- 妊娠中、授乳中の人
- 何らかの眼疾患をお持ちの人
- 膠原病などの全身疾患をお持ちの人
- 神経質な人
- 職業上の問題で視力回復手術を禁止されている人
視力回復手術のメリットとデメリット
レーシックや ICL といった視力回復手術は、裸眼での生活が手に入れられるというメリットがあります。コンタクトやメガネで生活されてきた人にとっては、夢のような話に聞こえることでしょう。もちろん、視力回復手術によって得られるメリットは非常に大きなものですが、どちらの手術も医療行為なので少なからずリスクが存在します。
手術による合併症を心配される人もいらっしゃると思いますし、年を取って白内障になった時のことや何らかの目の病気になった時のことなど、将来的なことについて心配する人もいると思います。合併症といっても必ず起こる訳ではありませんが、手術を受ける患者の立場として手術のメリットとデメリットについては知っておく必要があります。
<レーシックのメリット>
- 裸眼での生活が期待できる。
- メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放される。
- 手術の効果が得られるのが早い。
- 両眼 10 分程度で手術が終了する。
- 角膜強化型レーシックであれば角膜強度の低下を抑制できる。
- 角膜強化型レーシックであれば近視の戻りを予防できる。
- 趣味やスポーツを裸眼で楽しめる。
- 災害時の避難の際にコンタクトやメガネが不要になる。
- 子育てが楽になる。
- 湯気などでレンズが曇ることが無い。
- 運転免許の更新が可能になる。
- ICL よりも感染症のリスクが低い。
- 眼内にレンズを挿入することに抵抗がある方でも視力回復が可能。
- ICL よりも手術費用が抑えられる。
- 最新レーザーで手術を受ければ、ICL と同等のクリアな視界が得られる。
<レーシックのデメリット>
- レーザーで角膜のカーブを変える手術になるため元に戻すことができない。
- 角膜強化法を併用しないと角膜強度が低下する。
- 角膜を削ることで不正乱視が増加する可能性が高い。
- 手術後は一時的にドライアイ症状が起こることがある。
- 手術後は眼圧が高めに測定されるので、眼科検診を受ける際は申告が必要。
- 将来、白内障になった時に手術を断られる医療機関もある。
(全部ではない) - 手術後にハロー、グレアの症状が出ることがある。
- 角膜強化法を併用しないと近視が戻ることがある。
- 何らかの眼疾患がある人は手術が受けられない。
- 妊娠中、授乳中の人は手術が受けられない。
- 40 歳以上の人が近視を治すと老眼の症状が現れることがある。
(年齢は目安) - 格闘技や激しいスポーツをする人は手術が適さない場合がある。
- 年式の古いレーザーで手術を受けると手術の結果に影響がある。
<ICL のメリット>
- 裸眼での生活が期待できる。
- メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放される。
- 手術の効果が得られるのが早い。
- 両眼 15 分程度で手術が終了する。
- 角膜を削らないので角膜強度を維持できる。
- 角膜を削らないので近視の戻りが少ない。
- 趣味やスポーツを裸眼で楽しめる。
- 災害時の避難の際にコンタクトやメガネが不要になる。
- 子育てが楽になる。
- 湯気などでレンズが曇ることが無い。
- 運転免許の更新が可能になる。
- 角膜を削ることに抵抗がある方でも視力を回復できる。
- 手術後のドライアイ症状が少ない。
- 角膜を削らないのでレンズを取り除けば元の状態に戻せる。
- 角膜を削らないので不正乱視の発生が少なく、見え方の質が高い。
- 角膜の厚さに関係なく手術を受けることができる。
- 角膜形状に問題がある人でも手術を受けることができる。
<ICL のデメリット>
- 目の中のスペース(前房)が狭いと手術が受けられない。
- レンズを取り除くと近視や乱視が元の状態に戻ってしまう。
- 眼内手術のため角膜内皮細胞が減少する。
- 手術によって白内障が発症するリスクがある。
- 手術後に眼圧が高くなる可能性がある。
(必要な処置を行うこともあります) - 手術後にハロー、グレアの症状が出ることがある。
- レンズを取り除く処置にもリスクが存在する。
- 角膜の切開創が治癒する過程で乱視が発生することがある。
- 将来、白内障になった時にレンズを取り除く処置が必要である。
- 何らかの眼疾患がある人は手術が受けられない。
- 妊娠中、授乳中の人は手術が受けられない。
- 40 歳以上の人が近視を治すと老眼の症状が現れることがある。
(年齢は目安) - 格闘技や激しいスポーツをする人は手術が適さない場合がある。
- 何らかの眼疾患が認められた時は、レンズを取り除かなければならないケースがある。
- 眼内の手術のためレーシックよりも感染症のリスクが高い。
- レーシックよりも手術費用が高額である。
術式の違いを理解して適した手術を選びましょう
上記のように、メリットとデメリットを見てみると、日常生活においてはレーシックも ICL も有効な視力回復の手段であることがご理解いただけると思いますが、大きな違いは手術の方法にあります。角膜を削るレーシックは非可逆性の手術になりますが、角膜表面の手術になるので感染症のリスクは低く抑えられます。一方、ICL は眼内手術になるため感染症のリスクはレーシックよりも高くなります。また、レンズを取り除く時の処置にもリスクが存在することを忘れてはいけません。目の中に入っているレンズを取り出す訳ですから、眼内手術と同等のリスクが伴っても不思議ではありません。何か問題があっても簡単に元に戻せるといった印象を与える情報が多いと思いますが、その点は事前に理解しておく必要があります。
レーシックも角膜強化法を併用することで、デメリットだった角膜強度の低下や近視の戻りを予防することもできますし、最新のレーザーを使用すれば、ICL と同等の質の高い見え方を手に入れることも可能です。ICL しか導入していないクリニックは、ICL をアピールするためにレーシックを悪く言いますが、レーシックを執刀した経験がない医師の評価は説得力がありません。どちらも執刀している医師であれば、どちらのメリットもデメリットも知っていると思いますので、ICL がレーシックよりも優れているという情報に惑わされず、自分の目の状態に適した視力回復手術を選択することが必要だと思います。