白内障手術 クリニック選びのポイントは?

白内障手術を受けるためには、レンズや手術方法など多くの検討材料があると思いますが、白内障の進行状態や手術の時期、ご予算、実際に手術を受けるクリニック選びも重要な要素になります。
まずは、自分の白内障がどのような状態なのかを知るためにも、詳しい目の検査を受けて手術に向けた具体的な相談をすることが必要です。そこで、実際に白内障手術を受けるクリニックを選ぶ際のポイントについて紹介したいと思いますので、参考にしてください。

執刀医について

どんな手術にも言えることですが、自分を執刀する医師は手術の成功を左右する重要なポイントになります。大学病院や総合病院は在籍する医師の数も多いと思いますが、それぞれの医師がどの程度の実績を持っているかは解りづらいデメリットがあります。教授や助教授が白内障手術を執刀するかというと、中々そんな機会はないと思います。大規模な眼科クリニックも同様で、個々の執刀医の実績は把握しづらく、手術当日まで誰が執刀を担当するかも解らないことも多くあるようです。また、手術後の診察は別の医師が担当する分業制で診療しているクリニックもあるようなので、もし何らかのトラブルが生じた時のことを考えると不安に思う人も多いと思います。シンプルに考えれば、自分の大切な目の手術を任せる訳なので、「担当する執刀医が誰なのか」「執刀医の実績」「眼科専門医であるか」「屈折矯正に精通しいているか」「ライセンスの有無」など確認したいことは、事前に確認することが重要です。

【手術前に確認しておきたいこと】

  • ・執刀を担当する医師個人の実績
  • ・眼科専門医であること
  • ・屈折矯正の知識、技術が優れていること
  • ・手術に関係しているライセンスを取得していること
  • ・学会などで研究成果を発表していること(受賞歴など)

【執刀医の実績】

経験豊富な医師に手術を担当してもらえれば、患者としては安心感につながります。ただ、クリニック全体の実績しか紹介していない施設や非常勤医師の他院での実績まで加算している施設、法人全体の実績を紹介して水増ししている施設など、執刀医の実績を何とかして多く見せようとしているクリニックも少なくありません。執刀実績については、クリニックに在籍している期間中の実績をきちんと表示しなければならない決まりがありますが、それを真摯に守っているクリニックは少ないと思います。きちんとしたルールに則って、自らの執刀実績を提示しているクリニックは信用に値すると思いますので、ホームページなどに紹介されている実績を鵜呑みにすることなく、自分の手術を担当する医師個人の実績を確認するようにしましょう。逆に、わざわざ患者側が確認しなくても、ホームページに正確な実績が提示されているクリニックは、評価できると考えられます。

【眼科専門医であること】

白内障手術に限らず、目の手術や病気の診断は眼科専門医が担当することが望ましいとされています。実際の手術はもちろんですが、手術の適応を診断するのも眼科専門医が担当べき内容です。ただ、院長すら眼科専門医でないクリニックも存在しますので、注意するポイントとして覚えておいて損はないと思います。眼科専門医であれば、認定証書やプレートなどで表示があると思いますので、チェックしてみてください。

【屈折矯正の専門医であること】

屈折矯正手術と言えば、レーシックやフェイキックICL といった視力回復手術を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は多焦点眼内レンズによる白内障手術も屈折矯正の分野に該当します。屈折矯正は裸眼で物を見せるという目的がありますので、老眼鏡に頼る頻度が少なくなる多焦点眼内レンズによる白内障手術も屈折矯正手術に含まれます。日本では、屈折矯正を専門としている眼科専門医が少ないので、緑内障や網膜を専門としている眼科医も多焦点眼内レンズによる白内障手術を行っていますが、大切な自分の目を任せるのであれば、その分野に精通した医師に担当してもらいものです。

【手術に関係するライセンスを取得していること】

手術ライセンスや指導医ライセンスなど、手術を行う上で必要なライセンスを取得していることは、患者にとって安心できる材料のひとつです。
手術ライセンスの多くは、レンズやレーザーなどを開発しているメーカーが行うレクチャーを受けることで取得できますが、指導医のライセンスは医師を指導する立場の医師に与えられるライセンスになりますので、別格のライセンスになります。例えば、3 焦点眼内レンズの指導医ライセンスは、日本で1 人しか持っていませんので、とても貴重なライセンスになります。

【学会への参加実績や受賞歴にも注目】

眼科学会へ参加することは、医師個人の勉強にもなりますし、そこで発表するには日々の研究も欠かせません。ただ、日本の眼科医療は先進国よりも少し遅れているのが現状です。そのため、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどで開かれる世界的な眼科学会で講演するには、先進的な知識や技術が必要不可欠です。それでも、毎年のように招待講演を依頼される日本人の眼科医もいますし、世界中の眼科医が読む医療雑誌の編集員を務める日本人の眼科医もいます。数は少ないかもしれませんが、研究成果や症例実績、眼科医療への貢献が認められて多くの賞を受賞している日本人眼科医もいますので、頼りにできる存在だと思います。そんな医師がいるクリニックは人気が高くて当然なので、出会えたら幸運かもしれません。

手術室の清潔管理

目は、栄養が豊富な器官になるため、細菌が侵入すると繁殖しやすい環境にあります。そのため、一番怖い合併症は感染症と言われているほどです。
感染症は、悪化すると失明に至ることもありますので、クリニックの清潔管理はもちろんのこと、特に手術室の清潔管理は徹底して欲しいものです。
中には、外科的手術にも対応できるクリーンルームを完備しているクリニックもありますので、手術を受けるならそういった施設を選びましょう。

検査体制について

手術に向けた詳細な目の検査は、手術の成功を左右する重要な要素になりますので、忘れてはいけないポイントになります。皆さんは、検査を担当するスタッフの資格に注目したことはあるでしょうか。検査スタッフにも視能訓練士という国家資格があります。もちろん、手術に向けた検査を受けるのであれば、視能訓練士に担当してもらうことは必須の条件になります。ただし、国家資格を持つスタッフを採用するには多額の人件費がかかります。そのため、受付スタッフが検査を行っているクリニックもありますし、講習を受ければ取れる眼科コメディカルが検査を行っているクリニックもあります。どちらも本来は検査を担当するべきスタッフではありませんので、検査を受ける前に必ず確認しましょう。

眼内レンズの品揃え

多焦点眼内レンズには、2 焦点、3 焦点、4 焦点、5 焦点など焦点が合う距離によって様々なタイプのレンズがあります。せっかく多焦点眼内レンズで手術をうけるのであれば、自分に合ったレンズを選択したいものです。
ただし、日本は先進国の中でも多焦点眼内レンズの普及が遅れているのが現状で、取扱っているクリニックは限られています。また、取り扱っていたとしてもレンズの種類が少ないため、どうしても選択肢が限られてしまいます。これでは、「2 焦点と3 焦点でどっちにするか」といった選び方になってしまうので、焦点の数しか選択肢がない状態です。これでは、自分に合ったレンズで手術を受けることはできません。実際、多焦点眼内レンズには多くの種類がありますので、中には30 種類以上ものレンズを取り揃えているクリニックもあります。目の状態や生活スタイル、見え方の希望に合ったレンズを選択するには、多くの選択肢の中から自分に合ったレンズを選べるクリニックで手術を受けることがポイントになります。

保険診療にも対応したクリニック

白内障手術に限らず、目の手術を受けるのであれば保険診療に対応しているクリニックをお薦めします。何故なら、保険診療を行っているクリニックは、様々な目の病気に対応できるからです。レーシックやフェイキックICL といった視力回復手術を専門としたクリニックは、限られた診療しかしていないので、目の病気が見つかっても外部に紹介するだけです。手術中や手術後は、目の状態がデリケートになっていますし、手術の合併症が起きた時に適切に対応できる能力は、日頃から色々な病気と向き合っているクリニックの方が強いに決まっています。また、会員制の眼科クリニックなども登場しているようですが、診療費以外に会員費もかかるようです。
保険診療でも対応できる病気であれば数千円で足りるところが、数百万円もの価格が設定されています。もちろん、自費に特化したクリニックのようですが、もっといいレンズを選ぶためにお金をかけた方が自分のためになると思います。

オンライン診療には注意が必要

最近、オンライン診療という言葉をよく耳にすると思いますが、診療科目によっては、とても有効な方法だと思います。しかし、肝心な部分が観察できないため、眼科診療にオンライン診療は向いていないようです。目の奥にある網膜や視神経の状態を見ることもできませんし、視力検査や眼圧測定などの基本的な検査もオンラインではできません。そのレベルであれば、怖くて手術後の経過観察をオンライン診療に任せられるはずがありません。利便性だけをアピールしてオンライン診療を「客寄せパンダ」に使うようでは、大切な眼を守る意志が感じられません。