白内障について

白内障は、レンズの役割を担っている水晶体が白く濁る病気です。大半は、加齢が原因で起こる加齢性白内障になりますが、先天性白内障や外傷性白内障など加齢以外の原因で発症する白内障もあります。点眼薬や内服薬では、白く濁ってしまった水晶体を元に戻すことはできないため、治療法は手術しかありません。白内障になると、目の霞み、眩しさ、視力低下、物が二重に見えるといった様々な症状を自覚するようになりますので、症状を自覚した時は眼科を受診してみてください。
白内障手術は、年間で130万件も行われていますので、比較的身近に感じる手術かもしれませんが、白内障を放置することは非常に危険です。登場国では、医療機関が少ないために適切な時期に手術を受けられない人が多く、中途失明原因の第一位が白内障になっています。日本では、失明に至る割合が3% と非常に低くなっていますが、この多くが白内障を放置したことが要因となっています。

白内障の症状について

白内障は、もともと透明だった水晶体が白く濁ってくる目の病気ですが、その多くが加齢が原因の老人性白内障になります。水晶体が白く濁ってしまう原因としては、紫外線の影響で水晶体を構成するタンパク質の性質が変化することだと言われています。日差しが強い沖縄県などは、関東よりも白内障の発症時期が早い傾向にあるのも、紫外線が関係しているのかもしれません。白内障になっても、初期の頃は自覚症状がすくなく、水晶体の濁りが進行するに伴って、「光を眩しく感じる」「物が霞んで見える」といった色々な症状が現れてきます。

【白内障の主な症状】

  • ・光を眩しく感じる
  • ・物が霞んで見える
  • ・目が疲れやすくなる
  • ・物が二重に見える
  • ・視力の低下
  • ・メガネの度数が頻繁に変わる
  • ・明るい所と暗い所の見え方が違う
  • ・老眼鏡をかけても見えにくい
  • ・近視の症状が現れる

白内障の手術方法

濁ってしまった水晶体を透明に戻す薬はありませんので、白内障を治療するには手術しか方法はありません。白内障手術は、濁った水晶体を超音波で小さく砕きながら取り除いて、眼内レンズを挿入する「超音波乳化吸引術」が主流となっています。最近では、日帰り手術が可能になっていますので、入院の必要もなく日常生活への影響も少なくて済みます。手術を受ける時期としては、何らかの症状を自覚した頃が適切だと言われていますが、白内障を放置してしまうと水晶体が固くなって、手術の難易度が高くなってしまいますので、安全に手術を受けるには、適切な時期に手術を検討することが重要になってきます。

【白内障の流れ】

  • 水晶体を包んでいる水晶体嚢の前側を丸くくり抜きます。この工程を前嚢切開と言います。
  • 器具を使って水晶体を4つ~6つに分割します。この工程を水晶体分割と言います。
  • 超音波で、分割した水晶体をさらに小さく砕きながら、濁った水晶体を吸引して取り除きます。
  • 残った水晶体嚢(袋)の中に眼内レンズを挿入して、手術は終了となります。

【日帰り手術が可能です】

最近では、小さな切開創から手術ができるようになったので、日帰りでの手術ができるようになりました。日常生活への影響も少なくなりますので、手術手技の進歩は患者にとって大きなメリットになります。
ただ、白内障を放置してしまうと、水晶体が硬くなって通常の手術手技では対応できなくなる場合があります。水晶体を丸ごと取り出さなければならないケースもあり、レンズが入れられなくなってしまうことも・・・・・。
また、目の中の組織が弱くなっている場合なども、手術の難易度が高くなる要因になります。高齢になるほど目の中の組織が弱くなっていることが多いため、安全に手術を受けるためには適切な時期に手術を検討することが必要です。水晶体の濁りが強くなってしまうと、目の中に光が届かなくなるため、手術の前に行う検査も十分に行うことができなくなります。正確な検査ができなければ、度数の計算もできませんので、手術後に度数が合わないといったトラブルの原因にもなります。手遅れになるまで放置したリスクの高い白内障の手術は、医師だってやりたくないと思いますので、手術を受ける患者側も自分の目について責任を持ちましょう。

【白内障は放置すると危険です】

白内障を放置してしまうと、水晶体が硬くなってしまって超音波では砕けなくなってしまうため、水晶体を丸ごと取り出す手技に変更されることになります。眼内レンズを挿入することができなくなってしまうので、手術後の裸眼生活なんて希望は叶えられなくなります。それ以外にも、失明に至る可能性がある緑内障を併発したり、水晶体が溶けだす水晶体融解が起こることもあるので、注意が必要です。

白内障手術を受けるタイミング

白内障手術を受ける時期については、「手術をギリギリまで待つという考え方」と「症状を自覚した時が手術を受ける時期という考え方」の2つの考え方があるようです。では、手術を受ける患者にとって、どっちの考え方にメリットがあるのでしょうか。正解は、後者の「症状を自覚した時が手術を受ける時期という考え方」になります。理由はいくつかありますが、昔と今ではのレンズの製法が全く違うことと、白内障と同時に老眼も治療することができる多焦点眼内レンズの登場が大きく関係しています。

【眼内レンズの製法が違う】

昔のレンズは、型に素材を流し込んで作るモールディング製法で作られていましたが、今は素材を削ってレンズを作成するレースカット製法に変わっています。モールディング製法で作られたレンズは、汚れが付きやすく、視界が濁る原因でもありました。このため、眼内レンズの寿命が短く、レンズの交換が必要になるケースが多かったため、手術の時期をギリギリまで待つという考え方が生まれた訳です。今ではレースカット製法が主流となっていますので、レンズ汚れの問題も解消され、人間の寿命よりも長く良好な視機能を維持できるようになっています。これによって、見えづらいままで不便な生活を送らるよりも、早くクリアな視界で生活するメリットのほうが見直され、「症状を自覚した時が手術を受ける時期という考え方」が主流となっています。簡単に行ってしまえば、「手術をギリギリまで待つという考え方」は古い考え方だと言うことです。白内障手術は、いつかは受けることになりますので、患者にとっても不便さが解消できるなら早いに越したことはありません。

【老眼も治せる多焦点レンズの登場】

「症状を自覚した時が手術を受ける時期という考え方」が主流となったもう1つの理由は、多焦点眼内レンズの登場です。多焦点眼内レンズは、白内障と同時に、老眼・近視・遠視・乱視を治療できるメリットがあるので、日本でのニーズも高まってきているようです。
老眼は、40歳を過ぎた頃から自覚症状が現れると言われていますが、白内障も早い人で40代で発症すると言われています。目の老化現象である老眼と白内障が同居することになれば、見えづらさも倍増するかもしれません。以前は、1つの距離にしか焦点が合わない単焦点眼内レンズしか選択肢がなかったため、白内障手術は白内障だけを治療することが目的でしたが、多焦点眼内レンズが登場したことで、白内障と老眼を同時に治療するという目的に変わってきたのです。白内障が初期の段階であっても、老眼に不自由さを感じている方は、多焦点眼内レンズによる白内障手術で、両方が解消できてしまうので、早い時期に白内障手術を受ける傾向が強くなってきているという訳です。

眼内レンズの種類について

白内障手術で使用する眼内レンズには、焦点に違いによって多くの種類が存在します。遠方か近方のどちらか1つにしか焦点が合わない単焦点眼内レンズは、健康保険が適用されますが、手術後は必ずメガネ(老眼鏡)が必要となります。一方で、遠くも近くも焦点が合う多焦点眼内レンズは、白内障と一緒に近視、遠視、乱視、老眼を改善できるため、手術後のメガネの使用頻度が低減します。健康保険が適用されない自費診療になりますが、手術後の生活を重視する人にとっては、有効な選択肢になると思います。
多焦点眼内レンズには、2 焦点、3 焦点、4 焦点、5 焦点など焦点の数によって様々なタイプがありますが、必ずしも希望のレンズが適したレンズであるとは限りません。目の状態、見え方の希望、生活スタイルなどを考慮した上で、自分に合ったレンズを選択することが大切です。

  • 単焦点眼内レンズ:近方もしくは遠方のどちらか1 つ
  • 2焦点眼内レンズ:近方・遠方の2 つ
  • 3焦点眼内レンズ:近方・中間・遠方の3 つ
  • 4焦点眼内レンズ:近方・中間・遠中・遠方の4 つ
  • 5焦点眼内レンズ:近方・近中・中間・遠中・遠方の5つ

【自分に合った多焦点レンズを選択しましょう】

日本は、先進国と比べて多焦点眼内レンズの普及が遅れているため、まだまだ単焦点レンズしか取り扱っていないクリニックが多いのが実情です。
首都圏では、多焦点眼内レンズを取り扱うクリニックも増えてきましたが、1、2 種類しか選択肢がないクリニックが多く、勧められたもので手術を受けるしかないケースも多いと思います。まだまだ数的には少ないですが、実際に数十種類の多焦点眼内レンズを取り扱っているクリニックもありますので、そういったクリニックであれば、自分に合った眼内レンズを選択することができると思います。例えば、3焦点レンズであっても近方が弱いレンズもあれば、夜間視力に優れたレンズなど、レンズによって性能も異なりますので、見え方の希望や趣味、お仕事、スポーツなど生活スタイルに合ったレンズを選ぶことが大切です。

過去にレーシックを受けた方の白内障手術

2000 年頃から急速に普及したレーシック手術で、多くの方が良好な視力を手に入れられたと思います。当時、20 代だった人も老眼や白内障が始ってもおかしくない時間が経過しています。白内障手術では、濁った水晶体と眼内レンズを入替えますが、過去にレーシックを受けている人はレンズの度数計算をする際に特殊な計算式を使用します。眼科医の中でも屈折矯正に精通している医師であれば問題なく対応できると思いますが、過去にレーシックを受けているという理由で白内障手術を断られるケースもあるようです。これは、特殊な計算が必要になるため、レンズの度数がズレてしまうリスクがあるからです。過去にレーシック手術を受けている人が白内障手術を受ける時は、レーシックについても知識を持っている医師に相談することが安心材料になると思います。特に、多焦点眼内レンズによる白内障手術は、レーシックやフェイキックICL と同じ屈折矯正の分野になりますので、屈折矯正を専門としている眼科専門医であれば、様々な疑問にも対応してくれるはずなので、手術を受ける際の参考にしてください。